みなさん、「白沢」をご存知ですか? 白沢は中国の神獣ですが、マンガやアニメで大人気の「鬼灯の冷徹」の登場キャラクターとして知ってらっしゃる方も多いかもしれません。
二回に渡る妖怪検定の説明と事前準備を経て、いよいよ内容の部分に入りたいと思います。これから、私が近頃読んだ妖怪・怪異に関する書籍を一冊紹介したいとおもいます! そして妖怪検定のテキスト、『日本妖怪大全』の中から、関連する「妖怪」を空欄形式でまとめていきたいと思います。
白沢について
最初の「白沢」のことについて、を紹介していきたいと思います。
今回読んだ本は、佐々木聡さんの『復元 白沢図:古代中国の妖怪と辟邪文化』(以下『復元 白沢図』)です。
白沢とは、人間の言葉が話せる万物のことに精通している神獣です。その神獣は古代中国の王様、黄帝、にまつわる一つのエピソードがあります。
徳の高い黄帝は白沢と出会い、膨大な知識が授かれます。そして、その知識を『白沢図』という書物にまとめました。書物『白沢図』は2世紀~4世紀あたりに出来上がりましたが、残念ながら、この本は千年前の北宋の時期に散逸しました……
『復元 白沢図』の第一章は、白沢伝説、『白沢図』をはじめ、白沢伝説をまつわる様々な書物を紹介しています。『白沢図』は、すでに散逸してしまっていますが、同時代の書物の書き方からその背景を推察することができます。個人的に興味感じましたのは、「辟邪」の方法です。
『白沢図』の中には色々な「もののけ」の名前が記載されていまして、その名前を知れば、悪い働きする「もののけ」を退治することもできます。
なるほと!やはり名前は重要ですね。
漠然とした「変な事・病気」などの原因を起こした「犯人」の名前を知れば、どんな出来事や病気なのか、一瞬にカテゴライズすることができるようになり、対策を考えはじめることもできます!
そして、余談ですが、『千と千尋の神隠し』の中にも、湯婆婆も相手の名前が奪うことによって、相手を役使することができる設定がありますね。白沢と直接的な繋がりがないかもしれませんが、恐らく「名前の呪力」という類似する考え方が中に潜むのでしょう。
そして、第二章は、なんとあの散逸した幻い『白沢図』の復元した内容を掲載しています!!!!!
作者は中国の唐代から明代にかけて、あらゆる文献の断片から散逸した『白沢図』の引用や関連する記載を集めました。原文(漢文)以外、現代文の翻訳と解釈も加えられまして、非常に読みやすかったです!!前述のように、『白沢図』は「もののけ」達の名簿的な書物なので、「もののけ」達の名前、姿形などが記載されまして、一つの項目に関する記述は一、二行ぐらいで(漢文の方)、中国妖怪の百科辞典的な気分で気楽に読めます。
第三章は書物から離れまして、白沢の図像を紹介しています。中国と日本には白沢の姿を描いた辟邪絵(へきじゃえ)がありまして、白沢の姿を祀れば、様々な怪異や悪いことを避けると信じられました。それらの絵は、前述した宗教者、エリート達が読んでいる書物『白沢図』と異なって、辟邪絵としての白沢の図は庶民の中に浸透していました。…確かにそうですね。難しい漢字の「もののけ」の名前を暗記するより、絵を掛けるだけで済むのは大変便利ですね(笑)。…そして、日本の図像は「人面牛身」の姿は特徴的なところです。また、第三章は、辟邪絵以外、「白沢旗」、『三國志』の挿絵に登場した「白沢」など、白沢に関連する図像を数多く掲載されています。
ここで大雑把な内容を紹介しましたが、本当に色々な豊富な内容が紹介された著作で、興味のある方はぜひ読んでください!!
キャロルの妖怪検定ノート
そして、ここでは私の妖怪検定ノートに入りたいと思います。
あくまでも個人的なノートなので、良ければ、手元の『日本妖怪大全』(妖怪検定中級のテキスト)と照らし合わせてみることがおすすめです。
(ブチ試験にもなるように、ところどころ文字をハイライトしました!)
【神獣】
(予言系)
- 俻部(くたべ)(頁266)
- 現れる地域:越中・冨山県
- 現れる場所:山(越中の「立山」)
- 姿:人面の牛、腹の両脇に目
- 予言内容:四、五年以内、病気が流行り出し、俻部の姿を絵にして祀れば助かります。
(白沢と類似するという、白沢は鳥山石燕の『百鬼夜行拾遺』の巻末に載せられます。)
- 件(くだん)(頁267)
- 現れる地域:九州、四国
- 現れる場所:農家
- 姿:普通の子牛 (いきなり人間の言葉を話せることは怪異のポイントです)
- 予言内容:隣の家の火事、予言した後、子牛がすぐ死んでしまいます。
(神獣と関連がありませんが、他の予言系の妖怪:アマビエ(頁57)、神社姫(頁388)…など、姿は「人牛」ではなく、「人魚」の方が多いです。)
(中国関連系)
- 夔の神(きのかみ)(頁848)
- 現れる地域:甲府盆地の東北部(山梨)
- 現れる場所:山、山梨岡神社の祭神
- 姿:牛と蝦蟇の姿を合成している、一本足の奇獣
- ご利益:雷除け、魔除けの神
- 関連書物:①『山海経』、②『国語』魯語篇
- 日本の一本足妖怪(山爺、と一本だたら)のルーツとされる
- 龍(りゅう)(頁777)
- 海神や水神として考えられる方が多いです
- 金物が嫌いで、雨乞いとして利用することもあります
- 蜃(しん)(頁386)
- 蜃気楼を吐き出す幻獣、龍族の蛟(みずち)の種類に属する
- 書物、『本草綱目』の記載により、龍と似ている、たてがみは紅色、腰下の鱗は全逆向きとなっている。好きな食べ物はツバメです。
- 蛇と雉が交わって生まれる記述もあります。
- 獏(ばく)(頁561)
- 姿:鼻は象と似て、体形が熊と似て、目は犀に似て、尾は牛に似て、足は虎に似て、毛に斑点があります。
- 中国では疫病を食べる神獣で、日本では悪夢を食べる神獣です。
- 豊臣秀吉の枕元に獏の絵が描いています
- 出世螺(しゅっせぼら)(頁367)
- 山にある法螺貝が年月を経て、龍になることは、出世螺といいます。
- 遠州(静岡県)にその抜け跡がありました。
- その肉を食べば、長生きできます、
- トカゲとの繋がりがあります。
- 魃(ひでりがみ)(頁598)
- 日照り神、旱母(かんぼ)とも言います。
- 走りが早く、旱魃を起こす。
- 姿:顔は人間で、身体は獣
- 捕まえたら濁った水に投入し、たちまちに苦しんで死にます。
- 関連書物:①『三才図会』、②『山海経』には「剛山」の人面獣についての記載があります。
- 魃鬼(ばつおに)(頁584)
- 走りが速く、旱魃を起こす。
- 姿:𤝙(きょう)という獣と似ていまして、両目が頭のてっぺんにあります。
- 捕まえたら濁った水に投入すると、たちまちに苦しんで死にます。死後、旱魃の災害も消えると言います。
また、神獣ではないですが、神さまの、神農さん(しんのうさん)(頁867)と方相氏(ほうそうし)(頁909)も中国由来なので、合わせて暗記してみても良いかもしれません。
上記する内容に関しまして、もし何かの間違いがありましたら、ぜひ遠慮なく教えていただければ助かります!