私は、仕事柄、学生の卒業論文の相談を受けることがあります。四年生の秋になって慌てて準備したのでは、指導教官の先生から良い評価を得るのは難しいでしょう。それは、書く前の下準備が、とても大切で論文そのものの枠組みを決定するものだからです。だけど、就職活動や部活動があるのが、大学生活です。忙しい中、様々なことを処理していかなければなりません。
そこで、私が卒業論文を書く前に、猛烈にオススメする4つのことをここに書きたいと思います。(当たり前のことかもしれないですが、意外と忘れがちなことです。)
①良いテーマを選ぼう!! (ちょい古から現代へ、そして先生に相談するな!!)
当たり前ですが、卒業論文を始めるには、まずテーマを選ぶ必要があります。ただ、文系の学生で多いのは、「流行り」の現象に飛びついてしまい、「学術論文」としてまとめるのに苦労するということが度々あるのです。
例えば、「大好きな小説の世界における妖精の存在について調べたい」とか
「BL小説における性愛の表し方を調べたい」というものです。
(この二例は実話です。同内容で成功した卒論も多くあるとは思います。)
こうした事例は、非常に興味深いもので、何より調べていて面白いでしょう。しかし、このようなテーマでは、まとめる時に苦労することになります。それは「研究の中に自分の位置付けを見いだすことができない」状態に陥るからです。先行研究が、少ない研究を成り立たせるには、かなりのセンスと分析眼が必要ですし、指導教官との密な相談は欠かせないものとなるでしょう。
そこで、少し古い事例を選ぶことをオススメします。前の事例であれば、「大好きな小説の元ネタになった、アボリジ二の霊魂感や祖先崇拝を調べよう」とか、「江戸時代の『男色大観』」や、「明治時代の鶏姦罪の設立と廃止」などになるでしょう。
そして、「はじめに」の問題提起や、「おわりに」で自分の興味をもったBLや小説の話に持っていき、現代の問題とリンクさせると、綺麗にまとまるようになります。
ちょい古なテーマをすすめる理由は、研究のしやすさ以外にも、もう一つあります。それは、就職した職場で話すネタになるからです(^ ^) 私も、就職して働いた経験があるのですが、意外にも職場で「卒論は何やったの?」と質問されることが多々ありました。この時、すこし硬めなことをやっておくとちょっと自慢できるかもしれません。
良い職場に行けば行くほど、学歴や知識レベルの高い仲間に囲まれることになることをお忘れなく!!
新しい現象を追うことも、重要ですが、古く、すでに終わったと思われている研究の中にも、新しい発見があることを忘れないでください。
もっとも、私が、オススメしたいのは、あまり指導教官に相談しないことです。指導教官に過度に相談してしまうと、いつしか自分がしたい研究ではないものをテーマに選んでいたり、分析方法も先生におんぶに抱っこで、もはや誰の論文かわからないものもあったりします。
せっかく大学生になったのですから、できるだけ、自分の力で「研究」と向き合って欲しいのです。
②重要文献は早めに潰そう!!(5〜10冊から、最重要参考文献を設定する)
自分のテーマが決まったら、すぐに、参考資料の収集です。
Wikipediaは絶対に(もしくは、あまり)使わないでください。二度手間ですし、情報も怪しいものが多く、Wikipediaを元にした論文はすぐにバレます。そこで、学生のみなさんにオススメしたいのが、Google Scholarです。Google Scholarで検索した方が、早く参考文献を潰すことができます。
Google Scholarをオススメするのは、自分のテーマがどんな分析方法でアプローチされているか、そしてどんな研究者が研究しているのか、すぐに把握することができるからです。また、自分が使っているキーワードが、学術用語では使われているのかどうか、ということもチェックできますので、まず検索することをオススメします。
また、あえて、インターネットに頼らないという方法も、オススメです。インターネットサイトによって得た知識というのはどうしても、わかってしまうものです。(なぜか、本を元にしたか、サイトを元にしたかはよくわかります。)そのため、学生の論文が皆似通ってしまうこともあるのです。
ですから、思い切って、辞書や辞典、歴史的な名著から遡って、自分の研究を俯瞰することができるようになると、その研究はすでに最上級のものになっているはずです。
ここで文献を中心にした研究における二つの資料収集の流れがあることを意識していると楽になります。❶から❷の順で進めると無理がないでしょう。
❶先行研究(自分の研究テーマは、その分野においてどんなものか確認)
❷研究資料(研究テーマの資料をできるだけ、多く集める)
❶先行研究についての論文や本を適当に10本くらい集めてください。大切なのは、それを読まないことです。読むのは論文や本の後ろにある参考文献だけで良いと思います。参考文献を比較し、重複するものに丸をつけていきます。 それは「最重要参考文献」です。最重要文献は5冊程度に絞り、それから読んでいきます。
❶の作業中、留意することは、
・その本で参考になった部分はどこか?
・その本の弱点は何か?
とくに、先行研究の弱点はそのまま研究の「問題意識」となります。研究の資料を集める際の尺度を手に入れることができます。
この作業を終えてから、❷の研究資料の収集に移ったほうが効率的に研究を進めることができます。
③参考文献が「あなた」を表す。だけど、多ければ、良いというものではない。
参考文献リストを書いたり、引用を示すことを繰り返すのは、論文執筆で欠かせない作業です。この時、参考文献を多めに書いておいた方が、優秀なように感じるのは人間のサガです。しかし、多ければ良いというものではありません。
わたしの研究では、「ー(のばし棒)」をつけるかつけないか、カタカナ表記にするかしないかで、その人の研究スタンスを表すことがあります。この研究スタンスは、所属する研究機関・大学などによって、異なりますし、大学の指導教官の方の「敵」とみなされている研究者の論文を引用し、評価をすることは、とても危険なので、参考文献の属性を見抜くことも重要な作業になります。
④地図を書こう!! 論理構成の図式化
それでは、書き始めるぞ!となり、落とし穴にハマっていることに気付かず、最終章を書き始めた時、自分の間違いが明らかになる。そんなことは、よくあることです。
そこで、わたしがオススメするのは、簡単な地図を描くことです。できれば、具体的な例から、抽象的なものへ。もしくは、その逆で、抽象的なものから、具体的なものへとつながるように、自分の論文の流れを大まかに考えてください。
一番ダメなのは、「〇〇は、こう言ってます」という先行研究だけで、進んでしまう論文です。自分の考えを、明らかにし、そのためにデータを示す。もっとも大切なことは、自分の考えを実証することであると認識してください。
先行研究の問題点や、自分の考え・気づいたことを徹底的に書きまくってください。それの方が、読みやすいのです。
【こういう本も読むと良いかと思います】
それでは、卒論だけでなく、部活やバイト、飲み会をフルに楽しんでください。そちらの方が、学生の本分でしょうから😁