オニテンの読書会

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台湾の信仰と現代化を考える場所:十八王公廟

 乾華十八王公廟は台湾北部の廟で、北海岸の道沿いに位置し、海岸沿いのドライブで立ち寄る人も少なくないでしょう。1980年代では人々から熱狂的な信仰を集めましたが、現在では少し落ち着いてきているようです。

先月、3年間の廟の修繕が完成しまして、新しい建物が落慶しました。

[目次]

 

新しい廟が建設されましたが、今回の記事では、あえて、少し十八王公の歴史をふりかえってみましょう!

 

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乾華十八王公廟外観。周囲は粽や燒酒螺の屋台が集まっている。

写真:新北市客家民俗信仰館ウェブサイトより

 

 

十八王公の縁起

十八王公は元々清の時代に建てられた無縁仏の墓であり、墓の中には十七人の海難遭難者と一匹の犬が祀られています。(そして、「王公」の方は、男性の神様に対する尊称です。)

 

その縁起は以下のように記録されました:

石門郷乾華の十八王公は、清朝から現在にわたって数百年の歴史が持つという。伝説によると、十七人と一匹の犬が大きな帆船に乗っていて、海上で作業している際に突然大きな波が襲いかかってきて、船が壊れて人も亡くなった。犬がそれ(主が亡くなった様子)を見て、みずから海に身を投じて、主のために殉死した。その遺体は乾華一帯に漂着し、住民がすべての遺体を同じ場所に埋葬して、十八王公と称された。

ところが、十七人の身分について、他にも色々な説があります。例えば、ある長者は家族と合わせて十七人と一匹の犬で寺廟に参詣しに行く際に、海難のせいで人と犬全員亡くなったという説があります。何れにしても、十七人の海難遭難者と一匹の犬が祀られるという共通点です。

 

20世紀初頭、十八王公の信仰は基隆(台湾北部の港)の漁師の間に広まり、1963年に墓の隣に簡単な祠が建てられ、墓本体もタイルで舗装されました。1970年、近隣地区は第一原子力発電所の建設地に選ばれたため、住宅と十八王公の移設が問題視されました。そして、工事が始まると様々な事故が発生し、新聞やニュースが大きく取り上げられました。台湾電力公司(台湾国内唯一の公営電力会社)と十八王公の祠の管理者との間に協議が達成し、古い祠を取り壊し、新しい廟を建設するようになり、電力会社による度重なる建設により、現在広く知られた十八王公廟の規模が形成されました。

 

冷え性の十八王公

 十八王公に捧げる供物は熱々の粽や麻油鶏、タバコが多いです。それは信者が溺死した十八王公は体が冷えていると考えられているためだと言われました。また、漁師が漁に出る際に、体を温めるものを食べることに由来する説もあります。

十八王公の墓には布団が掛けており、同じように体が冷えているという発想です。

 

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写真:新北市客家民俗信仰館ウェブサイトより 

 

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お参りしやすいために建てられた墓。台湾の線香は基本的長くさしていますが、」よく見ると、中に点けたタバコが(供物として)混じられています

写真:新北市客家民俗信仰館ウェブサイトより 

 

霊験あらたかな流行神

十八王公の霊験が広く知られるのは、1980年代後半のことです。

1980年代、台湾では「大家樂」というギャンブルが流行っていました。

簡単に言うと、大家樂とは、政府が発行された宝くじの当選数字をもとにしたリスクの高い地下ギャンブルでした。当時、このギャンブルをする人は熱狂的で、家の全財産をぶち込んだ人も結構いましたので、人々はとにかく宝くじの当選数字が知りたがりました。大家楽の流行り出す時期である1985、1986年の新聞資料は常にその状況を「狂気」(中国語:「瘋狂」)として描き、人々は当選数字求めるために神頼みをするようになり、非合法的な宗教施設の数は著しく増加し、霊媒などに頼むこともしばしばあります。

しかし、どのような神様に聞く方が良いかと言うと、正義感のある偉い神様ではなく、親しみやすく、かつ若干道徳的なズレがあり、ギャンブルという「悪いこと」に許しそうな神様の方が良いかもしれません。

そのため、普段あまり有名ではない、祀り手のいない廟、または墓にいきなり多くの人々が向かい、「明牌」(宝くじの当選数字)を訪ねる人が急増しました。霊験のある神様なら、当たったらお礼参りとしてその廟を大きく立て直し、逆に、数字が外れ、霊験のない場合は、神様や仏様の像は逆に捨てられてしまい、像を壊すケースも少なくありません……

このような時代の流れに乗って、この時、十八王公廟は宝くじの当選数字を予測が的確だと噂が広まり、多数の賭博師が殺到しました。願い事はかなり多様ですが、ギャンブルに関する願い(宝くじ、賭博、麻雀)の割合は高く、漁師や海に関する側面が薄くなってしまいました。また、水商売をする女性もここに参詣するといわれました。

 

 

新しい廟の建設

1991年、道路建設の計画によって十八王公廟を取り壊そうとする動きがありました。そのため、現在の場所と2キロ離れた場所で、新しい十八王公廟を建立し始め、1995年の際に落慶しました。その特徴は高さ30メートルの巨大な犬の像で、胎内巡りもできるようです。

新廟の建設と伴い、旧廟は元々取り壊す予定であるが色々な事情の関係で現在までは両方並立している状態です。「大家樂」が禁止された後、十八王公廟の爆発的なブームが徐々に落ち着いてきました。

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新十八王公廟と巨大な義犬像。

写真:新北市客家民俗信仰館ウェブサイトより 

 

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 ①は旧廟の位置で、②は巨大の犬神の像のある新廟の位置です。ただし、今年は旧廟の修繕(…修繕というより、建物を全部取り壊して立て直すという方が適切かもしれません)で、旧廟が新廟より新しくなるややこしい状況になりました(笑)

 

2014年6月上旬、十八王公廟(旧)は工事に入りました。それは2010年から始まる都市計画の一環であり、趣旨は十八王公廟周りの不法建造物を取り払らい、環境保護、歴史的特色のある新しい観光地を作る計画です。

そして、今年の6月、新しく改築した十八王公廟が落慶しました。

 

きれいになる十八王公廟(旧)を考えると、なんか寂しくなる感じですが、変に「昔」の時代を思うノスタルジーに陥るも良くないでしょう。

新しく建設された十八王公廟も21世紀の風景を反映したら、それでいいでしょうね。

 

 

スピリチュアル紀行 台湾―魂をゆさぶる麗しの島

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 『スピリチュアル紀行 台湾: 魂をゆさぶる麗しの島』では、古い旧廟の様子を紹介しています

興味のある方は是非!!

 

 

 

 

参考文献

 

  • 練美雪(2013)、「新北市石門區乾華十八王公廟傳說研究」國立東華大學中国語文学学科 修士論文。

  • 黄萍瑛(2010)「十八王公」(文化部臺灣大百科:http://nrch.culture.tw/twpedia.php?id=1981

  • 胡台麗(1989)「神、鬼與賭徒:大家樂賭戲反映之民俗信仰」『中央研究院第二屆國際漢學會議論文集』台北市: 中央研究院 ページ401-424。

  • 志賀市子(2012)『「神」と「鬼」 (き) の間 : 中国東南部における無縁死者の埋葬と祭祀』 風響社。

 

〈神〉と〈鬼〉の間―中国東南部における無縁死者の埋葬と祭祀

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