オニテンの読書会

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人の結婚式を笑うな。 ーシンガポールのSNS炎上 人種問題と結婚式ー

  結婚式、それは、どの文化においても人生の門出を祝う、重要な儀式です。新たな家族が生まれ、それを人々が祝福する。そんな、ひとの結婚式をSNSで攻撃し、社会問題となった事件が、シンガポールであったのです。

 【目次】

 

 今回の記事では、シンガポールで問題となったアミー・チョン事件を題材に、シンガポールの人種政策、住宅事情、そしてマレー系の結婚式について書きます。

 

【ことのあらまし】

 2012年10月7日、アミー・チェン(Amy Cheong)という、オーストラリア人で、シンガポールの永住権を持つ37歳の女性が、Facebook上に、マレー系シンガポーリアンの結婚式について侮辱的なコメントを投稿した。そのコメントは、友人らによってシェアされ、瞬く間にインターネット上に広まった。投稿から数時間後には、ネチズンによって、彼女は人種差別主義者(Racist)との烙印をおされることになった。

 

 

Facebookへの投稿、炎上へ

 彼女の投稿コメントは、以下のようなものになっています。

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How many f**cking days do malay weddings at void decks go on for???F**k!!! Pay for a real wedding U as***le, maybe then the divorce ratewont be so high ! How can society allow ppl to get marrieged for 50 bucks?Kns! 

  彼女は、シンガポールの団地共有スペース(Void deck)で行われるマレー系シンガポーリアンの結婚式を侮辱し、離婚率が高いことを揶揄し、どうして社会が50ドル(シンガポールドルなら、3800円程度)の結婚式をゆるしているの?と、コメントを投稿しました。

 このコメントが、彼女の人生を大きく帰ることになります。

 

投稿、炎上、そして、、、

 彼女は当時、ナショナル・トレード・ユニオン・コングレス(NTUC)のアシスタントディレクターとして働いていましたが、コメント投稿の翌日には、解雇を言い渡されてしまいます。

 NTUCが当時出したコメントは、以下のようなものでした。

NTUCは、シンガポールの人種的な調和を真剣に考えている。私たちは人種差別的なスタッフのいかなる言葉や行為を受け入れたり、容認することはない。

 と、声明を発表し、彼女の解雇を公表したのでした。

 

 このコメントに対して、首相リー・シェン・ロンが当日にコメントを寄せています。そのコメントは、

(彼女の)コメントは間違っていて、到底容認できものではない。彼女を解雇したNTUCは正しい行いをした。

この事件は、特異なもので、シンガポールの人種間の関係の強さを反映したものではない。

と、国民に訴えかけました。

 

地元紙では、一面を飾るようなニュースになったのです。

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彼女は、Facebookの投稿によって、職をおわれ、シンガポールを後にすることになりました。現在、母国のオーストラリアで暮らしているそうです。

 

シンガポールの人種、住宅事情

 この問題を理解するには、シンガポールの人種の調和について学ばなければなりません。シンガポールでは、国民の約75%が華人系、約14%がマレー系、そして約8%がインド系となっています。国民の多くが華人系ではありますが、政府は、人種間の調和を目指し「シンガポール人のシンガポール」を作り上げるため、人種別集住地区を解体し、再開発を行いました。

 それによって、生まれたのが、公共住宅団地「HDB団地」といわれる、政府機関の管理下にある団地です。この団地に、国民の約80%が住んでいるのです。

 そして、徹底されているのは、団地の人種割合が、おおよそ国の人種割合と同じように調整されているのです。つまり、団地は、小さな国家となっているのです。

 その小さな国家である団地で、とくに人種の特徴が見られるのが、共有スペースのVoid deckです。このVoid deckでは、華人系住民は、葬式を、マレー系住民は、結婚式を行うのが一般的です。

 

マレー系シンガポーリアンの結婚式

 わたしは、シンガポールに滞在していた時、6回ほど結婚式にお邪魔したことがあいます。彼らの結婚式は、とても面白く、かつ、ほのぼのとして素敵なものでした。

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 (写真は、団地間に突如現れた結婚式会場です。新郎側でした。)

 

 まず、マレー系の結婚式は、新郎側・新婦側の二つの会場で、同時開催です。そして、新郎が、新婦を向かいに行き、新郎側の会場に戻ってきて、参列者に新婦をお披露目し、そして最後に新婦側の会場に二人で戻っていく、というプロセスとなります。

 この結婚式では、会場が団地ですから、新郎側から新婦側への移動は、つまり、団地から団地への移動を意味します。この移動では、新郎は10名ほどの音楽隊を率いて移動します。(この音が結構大きいので、もしかしたら、上述したアミー・チェンさんも、演奏を「騒音」と感じたのかもしれません。)

 彼らからの説明では、新郎は王、新婦は王妃であり、地域社会から認められることが、重要であるとのことでした。地域社会の人々に認めてもらうことを大切にしているからこそ、住んでいる団地で行うことになるのです。

 

 

 わたしが参加した結婚式の実際の写真です。

 

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 (こんな伝統的な衣装での婚礼から、、右は、タカギスグルです。

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(こんな、日本風衣装で行う方もいます!! Japanese正座をしているのがわたしです。

 

 地域密着型で、参列者数もおよそ1000人を超える超大規模な結婚式ですが、内容は本当にシンプルで、とても和やかな結婚式なのでした。

 

 いつか、結婚式に関して詳しい記事を書きたいと思います。

 

 

 

Malay Weddings Don't Cost $50 And Other Facts About Malay Cylture の出版

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  2014年、シンガポールでは、マレー系住民の結婚式や、慣習を説明する本が出版されました。題名も、『マレーの結婚式は50ドルかかりません。』という題名です。冒頭でも、アミー・チェン問題を取り上げており、彼女の投稿がある意味、民族の「自覚」、再認識を促したものであるとも、考えられるでしょう。

 

 

 

 シンガポールに訪れた際は、団地をのぞいてみてください。彼らの生活、そしてシンガポールという国がわかると思います。

 

 

 

 

【参考文献】

www.straitstimes.com

www.straitstimes.com

www.straitstimes.com