オニテンの読書会

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おすすめの小説 早見和真 『ひゃくはち』 野球をめぐる少年たちの物語

 みなさんは、早見和真さんの『ひゃくはち』を読んだことがありますか?この作品は、野球の強豪校で、レギュラーを目指す(目指した)少年の物語です。わたしは、高校野球を見るたびに、この小説を思い出します。

 

 早見和真著『ひゃくはち』のあらすじ

地方への転勤辞令が出た青野雅人は、恋人の佐知子から意外なことを打ち明けられた。付き合い出すずっと前、高校生のときに二人は出会っていたという。彼は、甲子園の常連・京浜高校の補欠野球部員だった。記憶を辿るうち――野球漬けの毎日、試合の数々、楽しかった日々、いくつかの合コン、ある事件、そして訣別。封印したはずの過去が甦る。青春スポーツ小説に新風を注いだ渾身のデビュー作。

ひゃくはち (集英社文庫)

 

 もう、大方のあらすじが分かってしまいましたが、わたしなりのおすすめポイントをご紹介したいと思います😊

 

強豪校とは、何かを知る

 まず、この物語の主人公は、レギュラー(スタメン)ではなく、補欠なのです。みなさんの中には、「なんだ、補欠か」とお思いの方も多くいらっしゃるかもしれませんが、強豪校では、補欠になることも、難しいのです。 

 わたしの経験をお話しいたしますと、わたしの高校時代の部活(剣道部)では、部員50名のうち、レギュラーは5名、そして補欠が2名でした。1軍から6軍まであり、部内の競争の方が、正直、地域の大会よりも大変でした。

 こうした強豪校には、才能を見出され越境入学してくる子や、夢を抱いて実績がなくても挑戦する子が集まってきます。毎日、毎日、文字通り血反吐を吐きながら、練習に明け暮れることになるのです。

 この『ひゃくはち』では、主人公の「補欠」という目線から、強豪校の日常に迫ります。きつい練習、たまの休みで羽を伸ばしたり、レギュラーになれるのかを指折り数えたり、と、リアルな「高校生」が描かれているように思えます。

 

指折り数えた自分の「枠」

 この『ひゃくはち』のすごいところは、試合が物語の中心にない、ということです。強豪校内の特異な人間関係、高校生というよりも、むしろ「実社会」に近い、人間関係を物語の中心として、描いているのです。

 この中でも、わたしが面白いと思ったポイントは、補欠の主人公が、自分の「枠」を計算し続けることです。この自分の「枠」を計算するという行為は、選手の個性や能力を比較し、監督の癖を読み、自分がスタメンや補欠として選ばれるかどうか、を検討することになります。

 わたし自身も、この「枠」をかなり、計算したタイプなので、読んだとき、「あぁ。わかる!」と、大きくうなずいてしまいました。

 強豪校では、人の目を引くほどの才能や実績がなければ、監督に名前を覚えてもらえない、ということも当たり前です。どこまで、自分を「売れるか」という、自己演出まで、描いた野球小説はなかなか無いのではないでしょうか?

 

夢のあと(後、跡) 大人になって出会う高校時代の自分

 物語は、ある事件を描いた後に、高校時代から、社会人へと話が進みます。この社会人時代では、高校時代の自分を、もう一度見つめなおすことになるのです。高校時代の自分たちを思い出すときに、恥ずかしくなったり、誇らしくなったり、と人それぞれであるとは思います。

 高校時代、青春時代とは、感情だけでなく、自分の能力や才能までも「むきだし」になる、そんな時代であると思います。その時に、起きた出来事を、今、大人になった自分が如何に見つめ、今に活かすのか、というテーマが、この物語には、あるようにも思います。

 

 現在、春の選抜が始まり、熱戦が繰り広げられています。この小説とともに、楽しく観戦されては如何でしょうか?

 

 

ひゃくはち (集英社文庫)

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映画化もされています

 

ひゃくはち プレミアム・エディション [DVD]

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青春時代を見つめ直すというテーマでは、津原泰水「ブラバン」も、おすすめです!!

 

ブラバン (新潮文庫)

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