オニテンの読書会

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台湾のダサカッコイイ男たち「台客」 台湾あれこれ①

恐らく中国語の教科書には出てこないと思いますが、、台湾のボップカルチャーや文化を理解する際に、わりと役に立ちそうな事柄を紹介していきたいと思います。

 

まずは、「台客」という言葉は、皆様ご存知でしょうか。

 

【中国語】

台客

ピン音表記:tai2 ke4

注音符号:ㄊㄞˊ ㄎㄜˋ

 

簡単に外見を言えば、↓このような「ちょい強面の派手なお兄ちゃん」的な感じの人達のことを指しています。

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台客の語源は定かではないですが、1940年代の台湾における民族間の対立に由来すると考えられています。第二次世界大戦以降、中国との内戦で、劣勢に立った国民党政権が台湾に移動することによって、政権と比較的に親しみを持っている「外省人」が、元々台湾に住んでいる「本省人」に対して使用する蔑称に由来する見方が一般的です。

 

ただし、「台客」が一般の人々の中に浸透していったのは、だいたい2000年代からです。

1990年代後半、「台客」は徐々にインターネット用語として広がり、そして、2004年から2005年にかけて、台湾のバラエティ番組が「台客」を主題とする企画を数多く考えました。面白おかしく「台客」を取り上げることによって、「台客」は間もなく当時の台湾社会のホットな話題になりました。

 

最初、バラエティ番組が「台客」を取り上げるとき、マイナス的な意味として捉えていました。イメージはだいたい以下四点が含まれています。

 

ダサい、しかもそれがおしゃれだと勘違している!

台客ファッション(?)は、このような感じ↓とみなされるます。

安いもの花柄シャッツ、白いT-シャツ、青白スリッパ(藍白拖)・革靴、金のネクレス、パンチパーマ・ロン毛・染髪…

かなりこだわりのあるようですが、どうやら「本物のおしゃれ」と勘違いしています。

 

とにかくなまっている

台湾では、教育機関などの公の場において、「中国語」(北京語)で話すのが普通です。ただ、台客と見なされる人々は、普段は方言(閩南語)で話しているため、中国語の発音はなまっています。

 

マナーがない

言葉使いが上品ではない、デパートなどの公共な場でもスリッパで出入りするイメージがあります。

そして、ビンロウ(檳榔)の汁を歩きながら吐く。

 

(ビンロウとは、植物の一種で、外観はヤシと似ています。その果実は緑色で、嗜好品として台湾に親しまれています。日本人の皆様はやや馴染みのないことですが、感覚的に、ガムや噛みタバコと類似し、噛むと眠気が覚めたり、テンションが上ったりする効果があります。ガムを噛んだ後吐き出さなければいけないことと同じように、ビンロウも同じで、最後はその残りと噛むうちに出てくる暗い赤の汁を吐き出さなければなりません。)

 

「ダサい」音楽が好み

よくダンスホールに遊びに行くとされ、賑やかな音楽が好みのイメージがあります。

「ダサい」エレクトロニカ系音楽、「ダサい」ヒップホップが好きと思われます。

改造したバイクや車で走ったり、運転する際にも、常に大音量で音楽を流しています。

 

ヤクザ・チンピラ・暴走族

台客は必ずしも裏社会と繋がりがあると限りませんが、やはり「ヤクザ・チンピラ・暴走族」との境界線があいまいなところがあります。ただし、裏社会と言っても、地方と密着している方です。例として、台湾の極道を描いている映画『モンガに散る』の中では、このようなイメージが援用されました。「台客」的な花柄シャッツ、主に方言(閩南語)や訛っている中国語で話している地方の組が、後々流暢な中国語を話し、スーツを着ている新興勢力の「外省人」の組との闘争へと至る様子を描いています。

 

やはり俳優さんは、結構花柄シャツを着こなしています(笑) 

  

モンガに散る [DVD]

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ここからみると、マイナスなイメージで使用されてきた「台客」は、二つの視点がみえる。

  • 「台客」と自称する人が少なく、ほぼ「台客じゃない」人が使用する他称です。
  • 民族問題以外、本当の「おしゃれ」、「都会人」などの存在と違い、田舎者を小バカにするニュアンスもあります。

 

ところが、このようなマイナスのイメージに使用されてきた「台客」は、徐々に変化していきます。2005年から、「台湾らしさ」、「台湾的な特色」を追求する風潮の中に、「台客」という言葉は徐々にプラスの意味が付与されました。一つの要因は、恐らく2005年、2006年、2007年に行われた「台客ロックフェスティバル(台客搖滾嘉年華)」のことと考えられます。

 

ロック精神

「台客」に対しての非難は、エリートたちに対抗する力になり、2005年は台北で、2006年、2007年は台中(台湾の中部に位置し、台北、高雄に次ぐ大都市)でフェスティバルを開催されました。ローカル系のバンド以外、主流な歌手も多数参加しまして、賑やかでした。当時の最も有名な曲は、恐らくロック歌手、伍佰(ウー・パイ)の「あなたはわたしの花」(你是我的花朵)でした。軽快なメロディに愉快なダンスで、当時の台湾では知らない人がいないほどの大ヒット曲です。

 

歌詞は中国語ですが、ちょっと訛っている感じで聞こえます! 

 

また、日本の歌手、橋幸夫の歌『恋をするなら』を閩南語でカバーする曲、『墓仔埔也敢去』(お墓でも行ける)

 

そして、2007年の台客ロックフェスティバルのデザインをみると、元々ダサいとされた花柄、派手な色使いなどをわざわざ使用しています。 

台客搖滾嘉年華演唱會('06)(DVD)

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また、バンドや歌手以外、民俗芸能やポールダンスなど、「ダサい」とされるものも、演目に加えられ、公的・娯楽的な演出をしました。

  

個性をもっている

前述のロック精神と共に、例え他の人に「ダサい」と言われても、ファッション、なまり、センスなど、自分らしさを貫きます。ブランド品やファッション用語を常に口にする都会人こそバカバカしいじゃないか!!(…という精神で反撃します)

 

郷土愛を持つ

台客を「台湾らしさ」、「台湾を愛する」概念と結びつき、洗練された都会人より、今は台客の方がより適切に台湾の精神を表現しているとされます。そして、台客の話題が一番盛り上がった当時、台湾の政治家達も花柄のT-シャツを着用して、自身のことを「台客」と宣言しました。自称することによって、自分は「外来」の者ではなく、台湾という土地への愛を強調しました。

 

プラスの意味を持つ台客をみると、前述のマイナスの意味の二つの視点はガラリと変わったことが見えます。台客は他人を蔑視する他称から、誇りを持っての自称に変わり、台湾全体を象徴する意味も包括するようになりました。伝統文化とも異なり、色々な現代的な要素が混じり合い、台湾の外部の国々に「台湾らしさ」を展示する意味を含むようになりました。

 

2000年代初頭ほどヒットしていませんが、現在も「台客」は依然として台湾社会に流通している用語として使用されています。プラスの意味も有りながら、マイナスの意味も残っています。例えば、中国語で「あなたはダサいですね!」は「你很台耶」(直訳:あなだは非常に「台」ですね)と表記し、台湾人の日常用語の中にも時々出てきます。また、用語面以外、台客ロックフェスティバルに使用された「台湾らしき」イメージも、それ以降の観光戦略、お土産などに使用されました。私自身も青白スリッパのポストカードを台湾のお土産屋さんで見たことがありました。外国人観光客にとって、多分意味不明でしょう(笑)。

 

 

使いこなすことは難しいと思いますが、皆様もぜひぜひ「台客」という言葉を憶えてください!

 

 

 

 

参考文献:

賴以婷,2006,「媒體建構的台客幻想世界—以【兩代電力公司】為例 」,輔仁大學,大眾傳播學研究所。

楊鎮吉,2008,「論「台客搖滾」的後殖民與次帝國意涵」,國立中正大學,電訊傳播研究所。