オニテンの読書会

文化・民俗や、オススメ本の紹介、思ったことも書きます。

山本さほ『岡崎に捧ぐ』をすすめたい。 Dedicated to Okazaki-san 

 みなさんは、『岡崎に捧ぐ』というマンガを御存知でしょうか?

 

気の抜けたタッチで描かれる作者の学生時代の思い出を描いた作品です。

絵が可愛らしくて、やわらかく、読んでいて笑い、気づけば泣いてしまっていました。

 正直、どこで胸に刺さったのか、涙腺が刺激されたのか、わかりませんでしたが、作品の作り出す雰囲気、作品全体が、思い出や友情、家庭環境などを精緻に描くことによって、読者の琴線に触れるようになっているのでしょう。

 

 ここまで、「泣ける」作品のおすすめ記事みたいになってしまいましたが、『岡崎に捧ぐ』は、れっきとしたコメディ、ギャグマンガです😊

考えてみれば『岡崎に捧ぐ』というタイトルも、ふざけてるw?と思います😊

 

岡崎に捧ぐ(1) (コミックス単行本)

岡崎に捧ぐ(1) (コミックス単行本)

 

 

 作品は、大人になった主人公と友人の岡崎さんが、駅の改札口で別れるところからはじまります。そして、岡崎さんと主人公である作者が出会う、小学校時代にさかのぼるのです。

岡崎さんは、若干ネグレクト気味の女の子、内気で健気なメガネ女子です。

私(主人公)は、能天気で、ゲーム好きで、ゲームし放題の岡崎さんの家に入り浸ることになります。

 

ここで、わたしが考える『岡崎に捧ぐ』のオススメポイントをご紹介いたします。

 

あの頃、青春とはゲームだった。80's生まれの子ども時代

 この作品の作者である山本さほさんは、おそらく、30台前半であると思います。わたしも同世代なので、彼女の青春時代に共感することが多くありました。とくに、小学校時代の思い出に登場するゲーム機の数々は、わたし自身も遊んだ経験のあるものがあり、とても懐かしい気持ちになりました。たまごっちや、ゲームボーイの出現、そして急激に進むゲームの発展に、驚きながらも食らいつこうとしていた子ども時代を思い出しますww

 こうした1990年代のゲームを描いた作品として、押切蓮介『ハイスコアガール』がありますが、『ハイスコアガール』が主に男の子目線で、ゲームセンターを舞台にした作品であるのに対して、この『岡崎に捧ぐ』は女の子の目線から、家庭ゲーム機を扱った作品になります。おおよそ同じ時代背景になるので、合わせて読んでも面白いです。

ハイスコアガール CONTINUE(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)

ハイスコアガール CONTINUE(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)

 

 

胸にくる心理描写

 学生時代の何気ない日常を描いたものであるのにもかかわらず、この作品が胸を締め付ける要因には、精緻な心理描写があります。少しネタバレになりますが、いつもは、自分からやりたいことを言わず、主人公の意に沿う形で過ごそうとする岡崎さんが、突然、剣道をやりたいというシーンがあります。彼女が、自信なさげに道場を覗き込み、剣道にふれ、友人である主人公に剣道をやりたいと告げる描写は、それまでの岡崎さんの性格を知っている主人公の、そして読者の心に刺さります。

 ただ、剣道をしたいというだけのシーンで、ここまでグッときたのは、とても不思議な気持ちでしたが、これは何気ない日常にある心の動きを精緻に描く作者の力量がなせるワザであるとおもいます。 

岡崎に捧ぐ(2) (コミックス単行本)

岡崎に捧ぐ(2) (コミックス単行本)

 

 

日常に潜むギャグ

 これまでは、『岡崎に捧ぐ』の素敵な部分をクローズアップしてきましたが、実はとても良くできたギャグマンガなのです。しかも、だいそれたギャグなどでなく、日常にそっとあるような面白いこと、子ども時代の妄想など、思わず「あるある」といってしまいそうなことばかりです。

 そうした日常に散りばめられたギャグが、岡崎さんの家庭環境や、受験などといったシリアスな問題とのコントラストとなって、前述したような読者の琴線にふれる作品となっているのだと思います。ギャグについて書きたいことは山程ありますが、ネタバレになってしまいそうなので、それは是非作品を読んで笑っていただきたいとおもいます。

 

 岡崎さん 幼馴染という稀有な存在

 この作品のタイトルにもなっている岡崎さんは、作者にとって唯一無二な友人です。しかし、そんな友人だけれども、育ってきた環境や、性格が違いから、理解ができないこともあるものです。

 この作品の始まりは、大人になった岡崎さんと駅の改札口で別れるシーンから始まります。このシーンで、「また明日」という笑顔の岡崎さんに対して、主人公は「今日は家で飲もう」とひとりごちます。主人公の気持ちを思いますと、親友・幼馴染でありながらも、完全には理解し得ない、掌握することのできない、そして自分との差異のなかにあるということからくる、寂しななのかなぁ、と考えてしまいます。

 こうした岡崎さんという存在を通して、自分を作り出していく主人公の姿は、わたし達が大人になる過程における友人という大切な存在との融和と葛藤を思わせるのです。

 

みなさんは、幼馴染はいますか。その人のことを思いながらよむことをオススメしたいです。

 

 この日常を描いたマンガでは、この『サトコとナダ』もオススメです!!

www.oniten-yomu-book.com